白昼夢、しぐれ
起きぬけ、陽だまりのなかにいた。
おひさまのにおいがした。春風がカーテンを柔く舞い上げ、あなたの前髪を揺らす。差し込んだ日差しに埃が反射し、ちらちらと照っていた。橙色に染まりゆくぬくもりの中で踊る星屑。さながらそれは夢のようで、気怠さも、欲も、すべて甘やかに絡めとって溶かしてしまう。
薄く重なった視線は微笑みへと変わり、白いシーツが波を作る。あなたの暖かさは、終わりを知らない。少し濡れた肌の質感、どちらからともなくふれあい、わたしの熱があなたへと移る。掠れた吐息がなにかをそっとささやく。ゆっくり記憶させるように反芻するけれど、あなたの言葉は少し難しい。背伸びをして、わかったふりをするわたしの幼さを、きっとあなたは見抜いているのでしょう。
時々、わたしは身体が二つにかい離していくように感じる。だから、目を閉じる。離れないように。溺れないように。それでも静かに響く鼓動のぬくもりは、涙が出てしまうくらいやさしいから。
ああ、言葉にするのが惜しいのです。
わたしはどうにも鈍いので、瞬きをしている間に、春時雨のように消えてしまうのではないでしょうか。
やさしさは時に恐ろしい。どうか、ずっと、覚めないで。
0コメント